新潟の小さな外構店が本気で目指す日本一の仕事への道のり!第104庭 玄関前の門壁 モザイクタイルと装飾性塗り材での仕上げ 「後」

門壁 モザイクタイル 目地ふき取り
朝から比べると温度計の目盛りはうなぎ上りに上昇しているのではなかろうか。刺すような日差しの勢いに負けじと汗が全身から噴き出す。日中、首に巻いたタオルが汗を吸っては乾いてを繰り返し、白い塩で自然にできた模様を描いていた。最近、熱中症対策で塩がきいているつけもの等を食している。塩が浮き出たタオルからはナスかキュウリの匂いを漂わせているかもしれない。

前回、タイルの目地ふき取りまで行った。門壁をモザイクタイルと塗り材で仕上げていくのだが、タイルが仕上がったので次は塗り材の工程に入っていく。
門壁 塗り仕上げ 下地シーラー
装飾性塗り材は各メーカーから多くの種類が販売されているが、ほとんどと言っていい程どの商品もシーラー(接着等を高める液体)や塗り材を何回も塗り重ねる工程を行う。
塗り重ねを行わず簡単に塗って終わりにしている壁を見た事はあるが正規の手順で簡単に塗って仕上げられるという商品は見当たらない。今後、そういった手間の省けた新商品開発を期待しつつ、今はいつも通り地味だが一つ一つ理由がある工程をたどっていきたい。
まず最初は下地調整塗りの為のシーラーを塗布。次の工程で壁の凹凸をなくす調整塗りを行う。その調整塗り材の接着増強材。重力のある地球で塗りものは常に剥離のリスクがついて回るが、仕上げ塗りによって隠れてしまう下地調整塗りは軽視されやすい。塗り始めの一番最初になるここが密着性が低く隙間がうまれると、この後のすべてに影響を及ぼす。塗り残しが無いようにしたい。
門壁 塗り壁 下地塗り
下地ブロックの凹凸調整塗りを行う。
この門壁でつかっているブロックのサイズは縦19cm横12cm長さ39cm。だが正確に寸法を取ると一つ一つのブロックは若干サイズが違っている。ブロックはセメントと砂・砂利・水をこねてつくる。ねり上げる時に入れた水でコンクリートの体積は増えるが、その水は気化してなくなってしまうのでその時に体積の収縮がおこり若干、サイズが一つ一つ違うのだ。そんな経緯があるのでどんなに上手にブロックを積んでも下地ブロックの凹凸調整塗りは必ず必要になってくる。
とは言うものの僅かな調整になるので数ミリ塗り専用の樹脂系のうす塗り材を使用しているが稀に「下地調整はしっかりと昔からあるモルタル塗り!」と見たり聞いたりする。当店では下地調整でモルタル塗りを行わない。理由は2つ接着力とブロック積みにある。
昔から日本全国あらゆる所で使われてきたモルタル塗りだが最近の塗り材と比べると接着力に顕著な差が出てしまった。その証明は新しい家が立ち並ぶ住宅地に行けばすぐ確認できる。以前は一般的な住宅の基礎と言えばモルタルで仕上げてあるのが普通だったが今の住宅の基礎は接着力の高い樹脂系塗り材が住宅メーカーに多く採用され綺麗に塗りあげられているのが確認できる。
もう一つの理由は当店の職人。数年続く雑用から始まりその後、初めて握らせてもらうのが三角鏝。持っている鏝の中で一番年季が入っているので凹凸を僅かに抑えながら積みあげられる。モルタル塗りは積んだブロックに多少凹凸があっても塗り厚みをつけて平らにする事が出来る。しかし、丁寧に積み上げ凹凸が最小限に抑えられれば、うす塗り調整で十分に平らにする事ができる。
門壁 塗り壁 下地塗り乾燥
下地調整塗り後、完全乾燥させる。
門壁 塗り壁 仕上げ塗り前シーラー
乾燥後、2度目のシーラーを塗布。少しドロリとした仕上げ材専用のシーラー。
門壁 塗り壁 仕上げ
仕上げた後に下地の色が透けて見えないようにしごき塗りを一回行う。ここでも時間を置いて乾燥を待ってから仕上げ塗りを行うのだが、厚く塗ってしまうとひび割れの原因になるので注意しながら厚みを抑えて塗っていく。
仕上げ塗り材は塗ってから数分で固まり始めるので時間をかけず手早く塗らなければいけない。塗りつけ後すぐに模様付けをするのだが固まり始めると模様付けは失敗となってしまう。気温の高い夏場は固まりやすく時間との勝負になる。何回塗ってもこの時は緊張しながら臨む事になる。
門壁 塗り壁完成
塗り上げ後無事、模様を付け終わる事が出来た。一息ついて目線を下げるとシャツの胸元やズボンのひざ上にも乾いた汗の塩が、ここにも白い模様を描いていた。
帰宅してTVを点けると今日の最高気温は34,2度となっていた。続いて流れたビールのCMを見て、下戸の当方でも今日飲んだら美味いのかもしれないと思えた。
工事完了
後日、完全に固まってから表札をつけて完成。門壁の前にある土のスペースにはどんな色味の花が似合うのかと手前勝手に想像したが何故かナスの花が思い浮かんだ。紫色した艶やかな花で個人的には美しいと思っているのだがナスと一緒ではさすがに怒られてしまうかも。


越後職人宅の庭をスライドショーで紹介