新潟の小さな外構店が本気で目指す日本一の仕事への道のり!第146庭 控え壁を門柱にアレンジ

床に就いた後、昔の出来事をよくあれこれ思いだす
良かった出来事では無く決まって失敗談が蘇る。
20代そこそこの頃、酒の席で日本一の職人になりたいと言った時に「どうなれば日本一なの」と笑われた事がある。
実績が伴なわない半人前、もちろん答えられない。
普段飲まないアルコールで多少高揚していたのかもしれない、思った事を簡単に口にできた懐かしくも歯がゆい若さだった。
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大きいブロック壁等の転倒防止に設けられるバットレス(控え壁)が注目されたのは去年、大阪でおきたプールのブロック塀倒壊の時だ。ある一定の大きさの壁には転倒防止の控え壁が必要とされている。
建築基準法(第62条の8第1項5号)で「長さ3.4m以下ごとに、径9mm以上の鉄筋を配置した控え壁で基礎の部分において壁面から高さの1/5以上突出したものを設けること」とある。国家資格となるブロック建築技能士用の教材本ではさらに詳しくブロックの高さ・基礎の形状で控え壁の有無・高さの制限まで記載されている。

つまり一定の大きさの壁には転倒防止のバットレス(控え壁、これよりバットレス)が必要となる。
ご存知の方もあられると思うが、上記画像がよくあるバットレス。かなり効率重視になっており、見栄えを理由にウチにも一つ欲しいとは思えない。
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庭と道路を区切る為に新設するブロック壁だが高さもあり基準を上回るのでバットレスを設置する。
そこでよくあるバットレスとデザインを変え今回は門柱型に仕上げていく。
事前に積み上げたブロック壁の内部からは連結用の鉄筋を出している。
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まずは掘削。
その後、砕石を入れ転圧。白いジャバラ状の管はライトの電気配線用。バットレスの内部に通すので予め準備している。
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ブロック塀の下部にあたる土留め部分は元々あった既存の基礎にあたる。したがってブロック塀の様に鉄筋が内部から出ていない。基礎部分も連結を図るためにアンカーを使用する。
基礎にドリルで穴を穿ち金具を先端にアンカーを差し込みハンマーで打ち付ける事で金具が内部で膨張し固定される仕組み。
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固定したアンカーと鉄筋を鉄線で結束し門柱の骨組みを組み上げる。

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基礎部コンクリート打設。
門柱上部に水が溜まらない様に先ほどの電線管とは別に排水用の菅をコンクリート最下部まで挿入。
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門柱設置。
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壁面から出てる菅がライト電線用、上部が水抜き用。
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門柱内部にコンクリート打設。
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門柱本体ができたのでここからは仕上げの工程となる。
石貼りだが、まず壁面に鉄平石を貼り付け目地入れ、拭き取りを行う。壁面の貼り付けは、重力との勝負と言えば大げさだが剥離=取れてしまう事になるのでしっかり接着させたい。「貼るのはいいけど本当にしっかりくっついてるの?」という心配さんにおススメは上から順に行う貼り付け。接着が甘ければずり落ちて教えてくれる。
貼り付け後、目地入れはすぐには行わずしっかり硬化した後に行った方が間違いが少ない。
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天端には乱貼りを行い目地処理を行う。 形こそ違えど壁面同様、用いたのは鉄平石で統一させている。どちらもジャワ産鉄平石。
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壁面の鉄平石貼りに少し戻る。
貼り付け後しっかり硬化させるためにすぐ目地入れを行わないと記載した。今回の場合で言うと冬場で気温も低く硬化に時間がかかるので目地は翌日にすることに決めていた。そこで石貼り後、影響のない下塗りを先に行っていた。本仕上げ前に行うもので凹凸を無くし形よく仕上げるために欠かせない準備塗りとなる。
壁面の鉄平石の工程で3枚の画像があるが2枚目、目地入れの画像では既に周りが下塗りされているのが確認できる。後先になってしまったがそれぞれの工程にわけて画像紹介させてもらいこのような形にした。

右手側画像、白い塗り材は仕上げの本塗り。

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最終工程となるライト設置。
内部に通していたジャバラ状の菅に電線を通しライトを固定できるようにドリルで穴を穿ち設置する。

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これにて完成。
バットレスはやはり見た目の観点からデザインにそぐわない場合があるが工夫する事で強度も見た目にも変える事が出来る。

学生時代、楽をして過ごしたぶん甘い考え方が染みついていた。そんな若者に現実は優しくない。日本一という分不相応な言葉を使えばなおさらだ。自分の無力さに小さくなっていると憐れと思ったのか「まずは日本一のテコを目指せ」と寄り添うように声をかけてくれた方がいた。年輪の様なシワが深く刻まれた熟練職人山田さんだった。テコとは職人の補助係で言わば雑用。
あれから20数年が経った。例えば有名な全国施工コンテストで最高位の大賞をとればそれが日本一なのか。どうなれば日本一になれるのか今でも分からない。
頂きを目指すのも良いが、実は目標が無くなってしまう方が不安を感じる。
当時、目標を持つ事で何も持っていない自身にわずかの期待を持つ事が出来た。くじけず歯を食いしばる事が出来た。
山田さんにかけて頂いた言葉を忘れず明日も現場に向かいたい。
越後職人が手がけた
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