先日、新潟市中央卸売市場で開催された「市場まつり」での出来事だ。市場まつりは水産物、青果物、花等が割安で販売されている他、豚汁鍋の飲食コーナーやゲームなどの色々な催し物がある。数年ぶりに訪れた市場まつりだが「セリ体験」を初めて覗いた。市場の中ほど広いスペースに準備されていたのだが、両手でしっかり持たなければならないぐらいの大きい白い発砲スチロール箱が無数においてありその中に頭か尾が飛び出すほど魚介類が入っている。箱に入っている魚の種類はそれぞれ違うようで好きな箱を来場者同士で競り落とすという事らしい。
カランカランと大きなベルの音を合図に人だかりが一層が大きくなっていく。安くお得に魚が欲しいというのは根底にあると思うが手を挙げて値段を告げる参加者は競り落としても落とせなくても真剣な表情の後に必ず笑顔で皆が楽しそうにしていた。そんな緊張と緩和が続く模擬セリ体験を取り仕切っていたのは市場のプロの方3人。
山のような氷を間近にして身を震わせ始めたセリの終盤でふと気が付いたのだが競り落とし確定のタイミングが稀に違うこと。通常、値段を言い合い一番高値を告げた者が競り落としの権利をもらえるのだと思うが必ずしも最後まで競り続けさせず少し手前で確定させている場合がある様に思えた。もちろんある一定の値段で競った所でだが子供や女性、又は二者の争いで高騰しすぎた場合などに「はい!○○○○円」と言ってプロの感覚で打ち切る。強面の顔から一転、丁寧に「おめでとうございます」と笑顔で競り落とした方に告げた後、引き締めた表情ですぐ次の競りに向かう姿が印象的だった。
厚着を重ねた人が行き交う寒さの中、鍋から僅かに漏れ出た湯気のような温かい人間味が市場の仕事を魅力的に感じさせてくれた。