新潟の小さな外構店が本気で目指す日本一の仕事への道のり!第118庭 幼少期は砂場、先々は。

またこの時期がやってきた。天候が不安定で薄暗い曇に覆われる日が増え始める季節だが寒い中でこそ、より温かみを色濃く感じられる場合もある。

先日、新潟市中央卸売市場で開催された「市場まつり」での出来事だ。市場まつりは水産物、青果物、花等が割安で販売されている他、豚汁鍋の飲食コーナーやゲームなどの色々な催し物がある。数年ぶりに訪れた市場まつりだが「セリ体験」を初めて覗いた。市場の中ほど広いスペースに準備されていたのだが、両手でしっかり持たなければならないぐらいの大きい白い発砲スチロール箱が無数においてありその中に頭か尾が飛び出すほど魚介類が入っている。箱に入っている魚の種類はそれぞれ違うようで好きな箱を来場者同士で競り落とすという事らしい。

カランカランと大きなベルの音を合図に人だかりが一層が大きくなっていく。安くお得に魚が欲しいというのは根底にあると思うが手を挙げて値段を告げる参加者は競り落としても落とせなくても真剣な表情の後に必ず笑顔で皆が楽しそうにしていた。そんな緊張と緩和が続く模擬セリ体験を取り仕切っていたのは市場のプロの方3人。

山のような氷を間近にして身を震わせ始めたセリの終盤でふと気が付いたのだが競り落とし確定のタイミングが稀に違うこと。通常、値段を言い合い一番高値を告げた者が競り落としの権利をもらえるのだと思うが必ずしも最後まで競り続けさせず少し手前で確定させている場合がある様に思えた。もちろんある一定の値段で競った所でだが子供や女性、又は二者の争いで高騰しすぎた場合などに「はい!○○○○円」と言ってプロの感覚で打ち切る。強面の顔から一転、丁寧に「おめでとうございます」と笑顔で競り落とした方に告げた後、引き締めた表情ですぐ次の競りに向かう姿が印象的だった。

厚着を重ねた人が行き交う寒さの中、鍋から僅かに漏れ出た湯気のような温かい人間味が市場の仕事を魅力的に感じさせてくれた。

庭 工事前

今回の現場は手付かずの庭。
 車庫の土間コンクリートの後ろ側に位置する庭だったので通路確保のため工事期間中、毎朝車を動かしてももらうことになりお客様には不便をかけてしまったが快く移動し続けてくれた。
暗渠排水
テラスを中心に目隠しフェンスで庭を囲うのが主だった内容の工事になるが、四方を住宅に囲まれた庭で日当たりに恵まれているとは言えず水はけが良くないとの事で初期段階で暗渠管を埋設した。細かい穴が開いている暗渠管はゆっくりではあるが水を通し排水してくれる。
但し排水と共に多少の土や砂も一緒に流れてしまうので下水管などに直接つないだりせず泥だまりなどを設けた排水マスに中継するなどの注意が必要になる。
レンガ花壇
今回の工事で目を引く事となるであろう砂場はいつもと少し違う趣向があった。
通常、砂場と言えば相場は囲って大量の砂をいれて完了となる。しかし今回の砂場は先々、砂場として使わなくなったら花壇として使用できるつくりで考えられているらしい。掃き出しの窓の正面の位置でレンガ囲いを円形に立ち上げていく。もちろん四角形のレンガを加工なしで急激なカーブで積むと目地が広がって仕上がりがお粗末になる。手間はかかるが事前に一枚一枚レンガの端を少しづつ切って目地が均等になるように加工してから積み上げた。
レンガ鉄筋

積み上げたレンガの上に30cm幅の石の乱貼りを行いベンチとしても座れるようにつくる設計になっている。
レンガの厚みが11cmなので残り19cm程の幅のコンクリートをレンガの内側に縁どる様に石の下地コンクリートとして打設する。しかしいくら強度の高いコンクリートも接着力は残念ながら高くない。レンガとコンクートの縁が切れてそこからひび割れが生じない様にレンガの穴を利用して加工した鉄筋を入れ込む事にした。画像の手前側に写っているのが加工した鉄筋で奥側にはその鉄筋をレンガに差し込んだ様子が写り込んでいる。
鉄筋結束
石割り付け
鉄筋同士を結束しコンクリート打設。
下地コンクリートは下地というだけあって見えなくなる部分だが仕上がりを支える根底の部分になる。以前から繰り返し伝えているが隠れてはいるが下地に影響が出れば必ず表面に何らかの影響が及ぶ。仕上がりを重視するうえで見えなくなる下地には同等以上の手間をかける必要性があると言っても過言ではなかろうか。
石貼りの下地が出来上がり、次の工程割り付けを行う。石貼りをベンチとしても座れるようにとの事なので石の外側の淵、つまり座った時に足の腿の部分が石の側面にあたるので、尖ってい所があって痛くて座らなくなったとなったら大問題、あたり障りの良い仕上げにしたい。機械を使い尖った部分を削れば簡単だが外側の自然石の断面は一番目立つポイントになるので人工的なカット断面になりやすい機械は使わず滑らかな断面の石を選りすぐって割り付けた。
貼り付け
貼り物で接着力が低く困る事はあっても高くて困る事はない。下地コンクリートと天然石両者に喰いつきの良いよう軟らかめに練り上げたモルタルを乗せ、石をあてがいハンマーでたたき込みながら貼り付ける。
目地拭き取り
硬化後、ゴム鏝で目地の奥まで埋まる様にこすりつけ、固まってとれなくる前に手早くスポンジで拭き取っていく。後日ふき残しがあり固まっていると涙が出るほど擦って落とさなくてはいけない。若かりし頃は自分の事で簡単に泣いていたのが懐かしい。中年ともなると若干の太々しさが備わるが、誰かの涙を落とす姿を見ると何故か自分の目からも水がにじむようになった。
仕上がり

砂場完成。
植栽
レンガチップ

最終工程の植栽、レンガチップ敷き。
庭 完成
砂場均し
これにて完成。
しばらくは子供さんと一緒に砂場を囲み、遊ぶ年頃を卒業したら砂を取り出し土に入れ替え草花を植えて花壇として楽しむとの事。レンガやブロック等で囲ってある花壇は水の逃げ場所が限られてしまうので排水が悪く草木が育ちにくい場合が少なからずある。先々の花壇の水はけを踏まえ、この砂場の他にも奥側に植えてある植栽スペース、左手前にある秋田石で囲った花壇それぞれに初期工程で排水用の暗渠が這わせてあり草花の根腐れに考慮している。 完成こそしたがこの時期、スコップ片手の砂遊びに本腰が入るのは暖かくなるまでお預けになるかもしれない。日を追うごとに朝晩はより寒くなると思うがご存じの通り地中は外気より温かく暗渠管を流れる水も凍る事はない。寒い冬はこれからが本番だが深々と雪が降る日も地中ではきっと黒い筒状のトンネルを水がゆっくりと静かに集水桝に向かって流れ続けているはずだ。
暗渠埋設

越後職人が手がけた

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