新潟の小さな外構店が本気で目指す日本一の仕事への道のり!第173庭 Reガーデン 塗り壁  準備編

DIYという言葉は既に9割の方が認知している。
ある不動産会社がインターネット調査した所、90%の認知回答があったらしい。
日本でのイメージは日曜大工であろうか。はじまりは英国で「do-it-yourself」戦後に自分で出来る事は自分でやろうと廃墟の上に立った人達の復興を願うスローガンだ。

背伸びをする必要は無く、手の届く範囲でよい。ものづくりせずとも脚立を立て点滅する洗面所の電球一つを交換するだけで家内は喜んでいた。リノベーション(修復・再生)の認知度は95%だ。

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今回の現場は塗り壁のリノベーション。
元々あった古い塗り壁が所々で剥離したらしく、ご家族で下地の状態まで研磨を行った。すごい。

剥離と聞いて、まず注意したいのは水(雨)。
昔からある笠木、ご存じの通り雨露から壁体を守るもの。セメント製のブロックやコンクリート壁はアルカリ性で酸性の雨と相性が悪く(アルカリ成分が酸性雨によって中和され溶出される)経年変化とともに削られやすい一面がある。雨に直接当たらない状態、つまり従来は笠木の存在があるだけでセメント製の壁体は守られていた。

しかし昨今では用途が多少変化している。
薄くてもしっかり貼りつく塗り壁や重みのあるタイルと言った強い接着力を求められる化粧仕上げが多くなることで強接着力の合成樹脂製品が増えた。合成樹脂とは簡単に言うと油性と水性の混合物。成分に油が使われている為、使い方を損ねると逆に剥離しやすい一面がある。
水の存在が樹脂の接着力を著しく阻害。合成樹脂製品を使う場合、油が使われているので気を付けたいのはやはり水(雨)となる。
雨水に晒されない、壁体に優しい仕上げを芯に据えて開始。
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笠木の撤去、及び傘に隠れていた塗材の研磨。
折角の笠木だが壁体への雨水の侵入や仕上げ後の汚れ防止の為、別の笠木に付けかえる事となった。


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笠木撤去後の状態。
中央部分の所々でモルタルが陥没し凹凸がある。
笠木があっても長雨の時など水は重力に従い、細く僅かな隙間をたどって下に進みこの窪みで小さな水溜まりをつくっていたやも知れない。その僅かな水が合成樹脂を弾き接着を阻害した可能性もある。

令和の世が刻々と移り変わるように、外構・庭業界も日進月歩。
今までの経験でどんなブロックでも積める、左官だから何でも塗る事が出来る。手に職を持っていると言う事にいつの間にか慣れてしまい新しいものづくりに意欲がそがれてしまっては職人の名が廃る。

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壁体には新しい笠木を取り付ける予定だがその前に防水処理として天端モルタルを行う。
下地処理としてシーラー(接着材)の塗布。シーラー乾燥後、塗膜をつくり吸水調整をする事で接着強化につながる。
モルタル(セメント配合)は一般的に持たれているイメージ程、接着力は強くない。モルタル施工を行う場合は事前のシーラー塗布等を上手く使いたい。
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シーラー乾燥後、パッキン(留め金)で板枠を挟み込み天端モルタルの準備を行う。
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左)接着ノロ 右)モルタル
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防水の為の天端モルタルだが剥離してしまっては本末転倒。もう一つ準備して接着させたい。
画像、左のバケツが接着剤とセメント粉の特別混合物。セメントを水で溶いたノロを接着増強に使う場合があるが、接着材でセメントを溶いた強力接着ノロを用意。
接着ノロを塗布後、かぶせる様にモルタルを天端に打設。木枠を外せばモルタル笠木となる。

これで塗り前の準備がひと通り済んだ。

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勉強会。

塗り前の下準備を行っている傍らで当店の職人、そして仲間の職人、老いも若いも交えて塗材の勉強会を行った。とは言え小さな専門店、数人程度のサークル活動のようなものだ。
資材置き場にコンパネを打ち付けて即席の壁を準備。

塗り方や先々行う予定の塗りパターンを中心に試し、意見を出し合った。
休日行ったこともあり、手をつないだ子連れのスタッフも。小さな体にぶかぶかの軍手、あどけない職人姿に本職達の口角もあがりリラックスした中で各々の鏝(コテ)を使い塗り上げていた。
もちろん、今回準備を調えた現場の仕上げパターン(櫛引き)の検討も行った。使用するのはやはり合成樹脂系の仕上げ材。とにかく乾きが速く塗って数分以内に仕上げないといけない。現場にある壁の全長は13m、途中で止まることは許されず一気塗りしなければならない縛りがある。
本番は些か心拍数が上がりそうだ。

次回、塗り壁 仕上げ編。
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