新潟の小さな外構店が本気で目指す日本一の仕事への道のり!第109庭 石でつくる小庭
雪で白くなった朝に見上げた鉛色の空。
2月も後半になり太平洋側の梅の開花など春を連想する事も増えてきたが新潟の朝はまだまだ寒い。日も少しずつ伸びてきてはいるが朝起きる頃は,まだうす暗く布団をでるのに毎朝葛藤がある。
しかし、そんな寒い冬でも雪が降ると小学生は喜んで遊んでいる。今風に言うとテンションが上がるっと言うのだろうか。当方が冬場、テンションを上げるのは湯気の立ち昇る鍋かラーメンを前にした時。「寒い日は熱燗で」という方も多いのでは。雪国、新潟のお楽しみも色々だ。
寒い冬にも新たな発見があった。
黒い色の黒乱石。素朴な雰囲気。主役の庭石では無く引き立てる石、名わき役の立ち位置という事で活用を見込んでいる。昨今の庭石は中国産の石が大多数を占める中、この石は新潟産。価格も他の石と比べると控えめらしく、今年の春から使える実用性の高い商品という事で早速、当展示場で使う事になった。
問題はどこに、どう展示するか。
去年の夏前の画像。
展示場内のレンガゲートに門扉が設置されている。
右側に開いた門扉のある場所がデッドスペースになっているから時間があるとき何か植えておいてくれと頼まれていた。その後、時間の余裕が無く月日が流れる。
冬になり周りの草木は夏前の画像と比べてあからさまに勢いを無くし小ざっぱりしていた。
ここで展示できれば都合が良いと即決。場所こそ狭いが坪庭と考えれば何ら問題はない。
坪庭で石とくると和庭でよくある形になるが、レンガで囲まれたこの場所は和洋折衷で面白い仕上がりになる期待が持てた。場所の次はどう展示するか。
ある程度の大きさがある立派な植木も考えた。しかし目線を下げ黒乱石と一緒に樹木を見れた方が良い。
「形の良い低木あっただろうか」。
狭い場所なので低木と黒乱石の低い位置での空間をつくる事にした。
2,3候補を絞った中で選んだマホニアを掘り起こした。
マホニアは常緑なので今時期でも緑が鮮やか。素朴な黒乱石がマホニアを引き立ててくれると思う。
植えた後、剪定(枝の一部を切り取る事)を行った。
植木の植え替えを行う場合、根を掘り起こす時に傷めないよう慎重に行うが、長く伸びた根はどうしてもスコップ等で切らなくてはならない。切りたくはない根だが、そこに回避方法はないので致し方ない。押さえておきたいのはその後処理になる。
シンプルに水を吸えなくなった木は枯れてしまう。今回のケースで言えばマホニアは根を切られた分だけ水分を取り込めなくなった事になる。
大まかだが植え替えた時、根の3分の1を切り離した。つまり以前の3分の2しか水を吸えなくなった。その量では水分が必要になる夏に向けて徐々に弱ってしまうのは明白だ。
そこで行わなければいけない事は根と同様に枝も三分の1切り落とし、根が吸い上げなくてはいけない水分量の負担を緩和する。つまり水分の需要と供給のバランスを整えてやる事で枯れ防止となる間引き剪定を行う。もちろん樹形を整えながら鋏を入れたい。
マホニアの周りに黒乱石を敷いていく。
黒乱石を敷き始めてすぐに、このスペースでの占める割合は黒乱石8割でマホニアが2割。引き立て役の黒乱石の割合が多すぎて、バランスが良くなく単調な仕上がりになる様に思えた。
少し悩む。
初めて使う商材なので決めつけるのも早計。このままやってみようと考えた。やりかえるとしても時間がそう掛かる広さでもない。良くない予想が当たる事になるかもしれないが経験になると前向きにとらえ進める事にした。
想定通りと言えば聞こえが良いが、見た目通り黒の割合が多い。
このまま進める。
マホニアの根回り部分に芝を敷く。
冬の芝は枯れ色の茶褐色。マホニアは冬でも緑なので脇を固めるのが茶色の芝と黒い石では色合いが寂しい。常緑のマホニアと合うように茶褐色になる事のない人工芝を使うことにした。
芝を加えるも全体の色合いのバランスはまだ取れていない。
しかし、芝や樹木の緑を素朴な黒乱石が十分引き立てているのは確認できた。後は安易だが繰り返しのように黒乱石に引き立ててもらおう。即ち草木の緑を追加する。
この段階で夕方の冷え込みが厳しくなり始める時間になっていた。氷点以下になる冬場の植え替えで浅く植えられている草木の細い根は凍る事もあり残念ながら枯れてしまう場合もある。無理をせず、翌日に持ち越した。
次の日は快晴。朝日が眩しい分だけ放射冷却が起こり、車のフロントガラスは厚めの霜が降りていた。土や人工芝の表面も霜で凍っている。
さて昨日持ち越した草木の追加を進める。
マホニアの左右にバランスをみて加える事にした。一度敷きこんだ黒乱石を取ってスペースをつくり、そこに粒の大きい黒乱石を間仕切りとして並べる。
マホニアの根回りに敷いた人工芝は彩りが良かった。しかし草木の根回りも同じようにするのもつまらない。少し趣向を変え、黒乱石と対照的な白い砂利を敷き込んだ。
これにて完成。
図面通りの決まったモノではなく、試しながらつくり込んでいく形をとったので面白くもあったが出来上がってホッとしたのが本音。
明るいうちにデジカメで撮影もできた。日中の気温が高い時間帯に草木の根に施す水極め(植えた時に生じる根周りの空洞を埋める技法)を済ませれば、気温の下がる夕方には既に根の周りの水分量は減り、凍害は起こりにくくなる。それでも心配な時は根の上層部に藁で覆ってやれば霜の凍害は防ぐ事は出来る。雪国の知恵として教わった。現在では藁を使うことはほとんど無く代用品で済ますが、おそらく藁が身近にあった時からの知恵なのであろう。
藁にちなんだ祭りに参加してきた。阿賀野市で開催された「ゆうきの里の火まつり」。
藁と竹で作った巨大なツリー形の賽の神を盛大に火をかけて無病息災、五穀豊穣を願う祭りだが、何メートルも積み重なった藁が雪原の中で燃え広がる光景は迫力があった。食事ブースで販売していた釜飯は何種類もあり、いくつか食べてみたがどれも味わい深かった。県内で3月にも冬や雪に関連した祭りやイベントはまだある。家に籠りがちな季節だが冬のお楽しみを求めて出かけるきっかけがあるのはありがたい。
越後職人宅の庭づくりをスライドショーで紹介